2008-07-31
UNIQLOCK LGBT版 欲しいです
○最近話題らしい「UNIQLOCK」、女の子がUNIQLOの服を着て、時計とともに踊り続けるみたいなのですが、これ、LGBT版を作ったら面白そうだなあと思っています。ダンス、WEB、ファッション、どれも昔からLGBTが活躍してきた分野。きっと目が離せない映像ができるはず。
日経に掲載されていた開発話がアイディアにあふれていて面白かったので、ご紹介。
■世界のテレビCMを超えたWEB広告「UNIQLOCK」・ウェブ開発物語
時報のリズムに合わせ、ユニクロの服を着た女の子たちが無表情で踊り続ける――。ファーストリテイリングのウェブ広告「UNIQLOCK(ユニクロック)」は今年、「カンヌ国際広告祭」など世界の3大広告祭すべてのインターネット部門でグランプリを勝ち取った。2007年6月のオープンからこれまでのページビューは212カ国合計1億3000万を超える。日本や世界に発信するポロシャツのウェブキャンペーンとして始めたUNIQLOCKのアイデアと開発の経緯を追った。(ウェブ開発物語)
■「UNIQLOCKは広告の未来だ」
「クールだ!」「これだけのクオリティーの高さはウェブでは見たことがない」。6月下旬に仏カンヌ市で開かれたカンヌ国際広告祭。既に5月の米「One Show(ワンショー)」と米クリオ賞の両インタラクティブ部門でグランプリを受賞していたUNIQLOCKは、カンヌの会場でも前評判が高かった。現地入りしたユニクロのグローバルWEB事業部部長の勝部健太郎氏とクリエイターの田中耕一郎氏は、来場者から次々に声をかけられた。
前評判通り、インターネット広告を審査する「サイバー部門」でUNIQLOCKがグランプリを受賞。勝部氏と田中氏は3冠の達成に喜んだが、さらに大きなサプライズが控えていた。メディアの枠を超えてアイデアを審査する「チタニウム部門」でUNIQLOCKがグランプリに選ばれたと関係者がこっそり教えてくれたのだ。
勝部氏が「皮膚感覚で嬉しいと感じた。ハートで、かな」と振り返るのも無理はない。チタニウム部門はテレビCMから新聞、屋外広告まですべてを含めた広告全体のグランプリとも言える賞だ。大会の事務局側が審査員を全員選出するという唯一の部門で、日本人の審査員もいなかったという。
サイバー部門の授賞式ではユニクロのTシャツ姿で参加した2人だが、チタニウム部門の授賞式では申し合わせたかのようにジャケットを着て登場した。
2人が一番嬉しかったと口をそろえるのは審査委員長の「君たちが広告の未来を作るんだ」という言葉だ。勝部氏と田中氏には単なるウェブサイトではなく、新しいメディアを作ったという自負がある。チタニウム部門のトロフィーはサイバー部門のトロフィーよりもずしりと重かった。
■延々と見続けてしまう映像
「いつまでも見てしまうでしょう。あの“麻薬性”はすごい」。業界関係者が手放しで評価するUNIQLOCKの魅力は、つい見続けてしまう質の高い映像と、ブログパーツを使ってユーザーが発信者となる仕掛けの組み合わせにある。ブログパーツ自体は珍しいものではないが、日本だけでなく韓国や米国、欧州、ブラジルまで85カ国に住む3万4000人以上が自分のブログにUNIQLOCKのブログパーツを貼った。
メーンサイト(http://www.uniqlo.jp/uniqlock/)では、女の子がダンスを踊る5秒間の実写映像と現在の時間を示す5秒間のアニメーションを交互に繰り返し流す。映像クリエイターや振付師らと協力して「本気で撮影した」(勝部氏)という100パターン以上のダンス映像をそろえた。ユーザーは毎回ランダムに切り替わる映像を見ることになる。
「人に話したくなるような『発見』を埋め込んだ」(田中氏)のも、見続けてしまうための仕掛けのひとつだ。夜の時間帯には女の子たちが机にうつぶせになって寝ている映像を流す。時間によっては、携帯電話向けのキャラクター「UNI」が映像の中にひょっこりと登場する。
この映像をそのまま小さな画面に納めたのが、UNIQLOCKのブログパーツとなる。映像を気に入ったブロガーは、自分のブログや「iGoogle」にその小型版を組み込むことができる。センスある映像を見せびらかせるわけだ。映像は時刻を表しているため、時計としての役割も果たす。
世界の利用者数を可視化するサイト「WORLD.UNIQLOCK(ワールドユニクロック)」も同時に開設した。最初に画面に登場するのは、日本を中心とした世界地図だ。各都市がブログパーツを使った人数を大きさで示す円で囲まれている。現在のブログパーツの利用者数とページビュー、国数もリアルタイムで表示する。
世界地図で全体のようすを一覧すると、その後は時報に合わせて5秒ごとに各都市をクローズアップする。吹き出しの中には、その都市でブログパーツを使っている人の数やページビューを表示する。吹き出しをクリックすると、ランダムに選ばれたブログを開くことができる。そのブログに貼られたブログパーツをクリックすれば、UNIQLOCKのメーンサイトにたどり着く。
時計、音楽、ダンスという世界共通の“言葉”を使ったことで、インターネットを通じて世界に発信できるツールとなった。
■もやもやしたアイデアの可能性を信じた
「あの時、なんで企画を通してくれたんですか?」。勝部氏はカンヌ国際広告祭の受賞後に、ファーストリテイリングの柳井正会長兼社長に聞いたことがある。それほどUNIQLOCKの企画は「もやもやとしたアイデアのまま」スタートした。
07年春、クリエイターの田中氏がユニクロに持ってきた資料は2枚。1枚目にはUNIQLOCKという言葉とともに「永遠に続くミュージックダンス時計」、2枚目には「ブログを中心に広がっていきます」と書いた。
もともと勝部氏と田中氏は「ブログを使ってメディアを作りたいね」という話を進めてきた。ブログパーツとして時計を使うのはどうか、時計はユーティリティーであると同時に表現にもなる、ユニクロらしい表現とは何か、服と人をシンプルにつなげるのはダンスだ、時計には秒のリズムがある――。アイデアを重ねるなかで田中氏がひらめいたのが「UNIQLOCK」という言葉だった。
田中氏がグーグルで検索をしてみたところ、検索結果は0件だった。「UNIQLOCKというユニークでキャッチーな言葉があれば、世の中は勝手に解釈していってくれるのではないかと思った」(田中氏)。0件という検索結果を示した画面をキャプチャーして、ユニクロに持ち込んだ。
広告のプレゼンテーションでは通常、了承されれば予算をつけて動き出せるだけの詰めた内容を持ち込む。しかし、田中氏は幸いにも「もやもやとしたアイデア」の段階で相談することができた。これまでにいくつもウェブ広告を一緒に手がけてきたことで互いの関係が築けていた。
実際、新しいメディアがどれだけページビューを稼げるかは未知数だ。ユニクロにとってはリスクをとることになる。「なかなかこういう段階で話を進められる関係は作れない。多くの場合は、クライアントを納得させるために理屈を詰めることで面白さが段々と薄れてしまう」と田中氏は話す。
ユニクロ側のメンバーは田中氏の説明を聞いて、目をぱちくりさせていたという。しかし、気になるものを感じたのだろう。「可能性があるから進めてみましょう」という結論を出した。
「ブログ」を活用すること、表現は「ダンス」「音楽」「時計」。アイデアの要素はそろったものの、具体論に落とし込むのはそこからだった。「ブログパーツを使った人の数をリアルタイムで見せれば?」「ダンサーのオーディション映像をユーチューブに流す」。勝部氏と田中氏は毎週、直接会って詳細を詰めていった。
5秒の実写と5秒のアニメを交互に繰り返すアイデアを持ち込んだのは、映像ディレクターの児玉裕一氏。映像として面白いだけでなく、アニメの再生時間を映像のローディングタイムとして活用できると気付いた。高画質の映像を流す際にかかるローディングタイムは大きなネックとなっていた。「児玉氏の映像を見て実現できると思った」(田中氏)。
「君の情熱だよ」というのが、勝部氏の質問に対する柳井会長の答えだった。「人間を見て信じてくれたのだろう」(勝部氏)。実際、UNIQLOCKは走り出すことで答えを出してきた。「意思決定プロセスがよかった」というのが田中氏と勝部氏の共通認識だ。
■柳井会長が名付けた「新メディア情報発信チーム」
実験的とも言えるUNIQLOCKをユニクロが押し進めたのは、勝部氏が「広告宣伝」ではなく「新メディア情報発信チーム」に所属していたことにも起因する。名付け親は柳井会長。2006年5月に新設した。勝部氏と田中氏が初めて出会ったのは新メディア情報発信チームが発足した直後だった。
勝部氏は「ウェブをやりたい」と柳井会長に直談判して抜擢された。もともと銀行のマーケティング部門の出身で、ユニクロでもキャンペーンのプランニングなどを手がけてきた。テレビ、雑誌、新聞、イベントとあらゆる媒体を手がけたが、ウェブ広告だけはやったことがなかった。
一方の田中氏はコンテンツ制作会社ティー・ワイ・オーの出身。映像制作を手がけた後、新規事業企画を担当してきた。独立した後はウェブを中心にテレビや新聞にこだわらない広告を手がけてきた。紹介された田中氏と勝部氏は偶然、同じ慶応義塾大学出身で年齢も1つ違いだった。
新メディア情報発信チームは6、7人のチームで、UNIQLOCK以外にもいくつものウェブキャンペーンを手がけてきた。最初こそウェブサイト作りから始めたが、新しいメディアを作るという発想が根本にあった。「広告宣伝のR&Dという位置づけに近かった」(田中氏)という。
■面白くかつ広告であること
06年12月に2人が手がけたのは「UNIQLO MIXPLAY(ミックスプレイ)」と名付けた15色のパーカーのウェブキャンペーンだ。各色のパーカーを着た男性ダンサーがダンスを踊る。サイトでは15人の動画の再生・停止を自分で調節でき、自分で動きをミックスできるようにした。
当時はユーチューブが人気を集めた頃で、「ユーチューブに広告を出してしまえ、というのが発想のスタートだった」と田中氏は振り返る。
ユーチューブにCMを出すというのは、簡単そうでハードルが高い。テレビと違い、面白くないと誰もクリックしないからだ。「映像そのものが面白いことと、広告であることを両立しなければならない。ある意味、シビアな戦いだった」(田中氏)。
ここで生まれたのが、ダンスという発想だ。ユニクロの服を着た人がダンスを踊るというのは、何も言わなくても服をアピールできる「シンプルな手段」(田中氏)。話題が広まり、実際に作った映像は99万回以上見られた。これはUNIQLOCKにも生かされた。
「全世界にいる店員そのものがメディアになるのではないか」というアイデアから生まれたのは07年10月に始めた「UNIQLO JUMP(ユニクロジャンプ)」だ。世界の店員がユニクロの服を着てジャンプをし、その瞬間を映像に撮ってコンテンツにした。
「どうしたら企業とユーザーを直接結び付けるコミュニケーションができるか」。広告宣伝ではなく、新しいメディアとしてのコミュニケーション手段を考え抜いた延長線上にUNIQLOCKがあった。
■ブロガーの反応がUNIQLOCKを変える
07年6月にUNIQLOCKをオープンした当時、2人には決して確実な自信があったわけではない。UNIQLOCKを開設した後、勝部氏と田中氏はブログパーツを貼ってくれたブログや感想を書き込んだブログを片っ端から読み込んだ。「面白いものを見つけた」「かわいい」。ブログには率直な感想が書き込まれていた。
女の子は無表情でよかったのか、世界に発信するのであれば外国人のダンサーも登場した方がいいのか――。2人が抱えていた様々な不安や疑問に、日々更新されるブロガーの書き込みが答えてくれた。
無表情さが不思議な感覚として伝わっていると分かれば、第2弾、第3弾にも踏襲。一方、余計だと分かったアラーム機能やプレゼント企画は第1弾だけで終えた。「守るべきところが何かを段々と見極めることができた」(勝部氏)という。
より広く世界のブロガーにアピールするため、報道機関向けリリース配信の共同通信PRワイヤーも活用した。欧米から南米まで、映像に関心があるブロガーやクリエイターが集まるサイトをピックアップし、集中的にUNIQLOCKを紹介してもらうよう働きかけた。「情報の根っこを押さえる」(勝部氏)作戦だ。
海外のブロガーがブログパーツを使い始めると、海外での受け止め方も飛び込んできた。「世界地図がちょっと違う」。日本を真ん中に据えた地図が海外の人から見れば新鮮に感じられることも気付いた。日本から発信することが大事なんだという自信につながった。
今でも田中氏は「UNIQLOCK」をキーワードにグーグルなどのアラートメールを設定しており、誰かがUNIQLOCKについてブログやSNSに書き込んだ内容は欠かさず読んでいる。リアルな反応を読み取ったことが「インターネットでゆるい囲い込みをする感覚」に自信をつけた。
■「企業のメディア化が進むと思う」
勝部氏は広告の未来について「企業のメディア化が進むと思う」と語る。これまでは広告代理店やメディアが企業とユーザーをつないできた。しかし、ウェブは直接つなげることを可能にする。各企業が自分のメディアを持ち、情報を発信する世界だ。
ただし、「メディアを自分で作るにはリスクが伴う」(田中氏)。広告代理店やメディアはユーザーを数多くつなげることを強みとしてきた。ただウェブサイトを作っても誰も見に来てはくれない。「ユニクロはリスクをとってくれた」(田中氏)。
ちなみにユニクロがテレビ広告などにかける国内事業の広告宣伝費は07年8月期は210億円。テレビの枠の買い取り費用がかかるテレビと比べてウェブは低予算だが、制作費はかかる。UNIQLOCKでは通常のテレビCMなどの制作費と同程度はかかったという。
勝部氏は「もっとマスに出ていきたい。知る人ぞ知るではなく誰でも知っている世界をつかみたい」と熱をこめる。そのための「革新的なアイデア」を今秋にも投入する計画だ。ユニクロの新メディア戦略の挑戦は続く。
日経に掲載されていた開発話がアイディアにあふれていて面白かったので、ご紹介。
■世界のテレビCMを超えたWEB広告「UNIQLOCK」・ウェブ開発物語
時報のリズムに合わせ、ユニクロの服を着た女の子たちが無表情で踊り続ける――。ファーストリテイリングのウェブ広告「UNIQLOCK(ユニクロック)」は今年、「カンヌ国際広告祭」など世界の3大広告祭すべてのインターネット部門でグランプリを勝ち取った。2007年6月のオープンからこれまでのページビューは212カ国合計1億3000万を超える。日本や世界に発信するポロシャツのウェブキャンペーンとして始めたUNIQLOCKのアイデアと開発の経緯を追った。(ウェブ開発物語)
■「UNIQLOCKは広告の未来だ」
「クールだ!」「これだけのクオリティーの高さはウェブでは見たことがない」。6月下旬に仏カンヌ市で開かれたカンヌ国際広告祭。既に5月の米「One Show(ワンショー)」と米クリオ賞の両インタラクティブ部門でグランプリを受賞していたUNIQLOCKは、カンヌの会場でも前評判が高かった。現地入りしたユニクロのグローバルWEB事業部部長の勝部健太郎氏とクリエイターの田中耕一郎氏は、来場者から次々に声をかけられた。
前評判通り、インターネット広告を審査する「サイバー部門」でUNIQLOCKがグランプリを受賞。勝部氏と田中氏は3冠の達成に喜んだが、さらに大きなサプライズが控えていた。メディアの枠を超えてアイデアを審査する「チタニウム部門」でUNIQLOCKがグランプリに選ばれたと関係者がこっそり教えてくれたのだ。
勝部氏が「皮膚感覚で嬉しいと感じた。ハートで、かな」と振り返るのも無理はない。チタニウム部門はテレビCMから新聞、屋外広告まですべてを含めた広告全体のグランプリとも言える賞だ。大会の事務局側が審査員を全員選出するという唯一の部門で、日本人の審査員もいなかったという。
サイバー部門の授賞式ではユニクロのTシャツ姿で参加した2人だが、チタニウム部門の授賞式では申し合わせたかのようにジャケットを着て登場した。
2人が一番嬉しかったと口をそろえるのは審査委員長の「君たちが広告の未来を作るんだ」という言葉だ。勝部氏と田中氏には単なるウェブサイトではなく、新しいメディアを作ったという自負がある。チタニウム部門のトロフィーはサイバー部門のトロフィーよりもずしりと重かった。
■延々と見続けてしまう映像
「いつまでも見てしまうでしょう。あの“麻薬性”はすごい」。業界関係者が手放しで評価するUNIQLOCKの魅力は、つい見続けてしまう質の高い映像と、ブログパーツを使ってユーザーが発信者となる仕掛けの組み合わせにある。ブログパーツ自体は珍しいものではないが、日本だけでなく韓国や米国、欧州、ブラジルまで85カ国に住む3万4000人以上が自分のブログにUNIQLOCKのブログパーツを貼った。
メーンサイト(http://www.uniqlo.jp/uniqlock/)では、女の子がダンスを踊る5秒間の実写映像と現在の時間を示す5秒間のアニメーションを交互に繰り返し流す。映像クリエイターや振付師らと協力して「本気で撮影した」(勝部氏)という100パターン以上のダンス映像をそろえた。ユーザーは毎回ランダムに切り替わる映像を見ることになる。
「人に話したくなるような『発見』を埋め込んだ」(田中氏)のも、見続けてしまうための仕掛けのひとつだ。夜の時間帯には女の子たちが机にうつぶせになって寝ている映像を流す。時間によっては、携帯電話向けのキャラクター「UNI」が映像の中にひょっこりと登場する。
この映像をそのまま小さな画面に納めたのが、UNIQLOCKのブログパーツとなる。映像を気に入ったブロガーは、自分のブログや「iGoogle」にその小型版を組み込むことができる。センスある映像を見せびらかせるわけだ。映像は時刻を表しているため、時計としての役割も果たす。
世界の利用者数を可視化するサイト「WORLD.UNIQLOCK(ワールドユニクロック)」も同時に開設した。最初に画面に登場するのは、日本を中心とした世界地図だ。各都市がブログパーツを使った人数を大きさで示す円で囲まれている。現在のブログパーツの利用者数とページビュー、国数もリアルタイムで表示する。
世界地図で全体のようすを一覧すると、その後は時報に合わせて5秒ごとに各都市をクローズアップする。吹き出しの中には、その都市でブログパーツを使っている人の数やページビューを表示する。吹き出しをクリックすると、ランダムに選ばれたブログを開くことができる。そのブログに貼られたブログパーツをクリックすれば、UNIQLOCKのメーンサイトにたどり着く。
時計、音楽、ダンスという世界共通の“言葉”を使ったことで、インターネットを通じて世界に発信できるツールとなった。
■もやもやしたアイデアの可能性を信じた
「あの時、なんで企画を通してくれたんですか?」。勝部氏はカンヌ国際広告祭の受賞後に、ファーストリテイリングの柳井正会長兼社長に聞いたことがある。それほどUNIQLOCKの企画は「もやもやとしたアイデアのまま」スタートした。
07年春、クリエイターの田中氏がユニクロに持ってきた資料は2枚。1枚目にはUNIQLOCKという言葉とともに「永遠に続くミュージックダンス時計」、2枚目には「ブログを中心に広がっていきます」と書いた。
もともと勝部氏と田中氏は「ブログを使ってメディアを作りたいね」という話を進めてきた。ブログパーツとして時計を使うのはどうか、時計はユーティリティーであると同時に表現にもなる、ユニクロらしい表現とは何か、服と人をシンプルにつなげるのはダンスだ、時計には秒のリズムがある――。アイデアを重ねるなかで田中氏がひらめいたのが「UNIQLOCK」という言葉だった。
田中氏がグーグルで検索をしてみたところ、検索結果は0件だった。「UNIQLOCKというユニークでキャッチーな言葉があれば、世の中は勝手に解釈していってくれるのではないかと思った」(田中氏)。0件という検索結果を示した画面をキャプチャーして、ユニクロに持ち込んだ。
広告のプレゼンテーションでは通常、了承されれば予算をつけて動き出せるだけの詰めた内容を持ち込む。しかし、田中氏は幸いにも「もやもやとしたアイデア」の段階で相談することができた。これまでにいくつもウェブ広告を一緒に手がけてきたことで互いの関係が築けていた。
実際、新しいメディアがどれだけページビューを稼げるかは未知数だ。ユニクロにとってはリスクをとることになる。「なかなかこういう段階で話を進められる関係は作れない。多くの場合は、クライアントを納得させるために理屈を詰めることで面白さが段々と薄れてしまう」と田中氏は話す。
ユニクロ側のメンバーは田中氏の説明を聞いて、目をぱちくりさせていたという。しかし、気になるものを感じたのだろう。「可能性があるから進めてみましょう」という結論を出した。
「ブログ」を活用すること、表現は「ダンス」「音楽」「時計」。アイデアの要素はそろったものの、具体論に落とし込むのはそこからだった。「ブログパーツを使った人の数をリアルタイムで見せれば?」「ダンサーのオーディション映像をユーチューブに流す」。勝部氏と田中氏は毎週、直接会って詳細を詰めていった。
5秒の実写と5秒のアニメを交互に繰り返すアイデアを持ち込んだのは、映像ディレクターの児玉裕一氏。映像として面白いだけでなく、アニメの再生時間を映像のローディングタイムとして活用できると気付いた。高画質の映像を流す際にかかるローディングタイムは大きなネックとなっていた。「児玉氏の映像を見て実現できると思った」(田中氏)。
「君の情熱だよ」というのが、勝部氏の質問に対する柳井会長の答えだった。「人間を見て信じてくれたのだろう」(勝部氏)。実際、UNIQLOCKは走り出すことで答えを出してきた。「意思決定プロセスがよかった」というのが田中氏と勝部氏の共通認識だ。
■柳井会長が名付けた「新メディア情報発信チーム」
実験的とも言えるUNIQLOCKをユニクロが押し進めたのは、勝部氏が「広告宣伝」ではなく「新メディア情報発信チーム」に所属していたことにも起因する。名付け親は柳井会長。2006年5月に新設した。勝部氏と田中氏が初めて出会ったのは新メディア情報発信チームが発足した直後だった。
勝部氏は「ウェブをやりたい」と柳井会長に直談判して抜擢された。もともと銀行のマーケティング部門の出身で、ユニクロでもキャンペーンのプランニングなどを手がけてきた。テレビ、雑誌、新聞、イベントとあらゆる媒体を手がけたが、ウェブ広告だけはやったことがなかった。
一方の田中氏はコンテンツ制作会社ティー・ワイ・オーの出身。映像制作を手がけた後、新規事業企画を担当してきた。独立した後はウェブを中心にテレビや新聞にこだわらない広告を手がけてきた。紹介された田中氏と勝部氏は偶然、同じ慶応義塾大学出身で年齢も1つ違いだった。
新メディア情報発信チームは6、7人のチームで、UNIQLOCK以外にもいくつものウェブキャンペーンを手がけてきた。最初こそウェブサイト作りから始めたが、新しいメディアを作るという発想が根本にあった。「広告宣伝のR&Dという位置づけに近かった」(田中氏)という。
■面白くかつ広告であること
06年12月に2人が手がけたのは「UNIQLO MIXPLAY(ミックスプレイ)」と名付けた15色のパーカーのウェブキャンペーンだ。各色のパーカーを着た男性ダンサーがダンスを踊る。サイトでは15人の動画の再生・停止を自分で調節でき、自分で動きをミックスできるようにした。
当時はユーチューブが人気を集めた頃で、「ユーチューブに広告を出してしまえ、というのが発想のスタートだった」と田中氏は振り返る。
ユーチューブにCMを出すというのは、簡単そうでハードルが高い。テレビと違い、面白くないと誰もクリックしないからだ。「映像そのものが面白いことと、広告であることを両立しなければならない。ある意味、シビアな戦いだった」(田中氏)。
ここで生まれたのが、ダンスという発想だ。ユニクロの服を着た人がダンスを踊るというのは、何も言わなくても服をアピールできる「シンプルな手段」(田中氏)。話題が広まり、実際に作った映像は99万回以上見られた。これはUNIQLOCKにも生かされた。
「全世界にいる店員そのものがメディアになるのではないか」というアイデアから生まれたのは07年10月に始めた「UNIQLO JUMP(ユニクロジャンプ)」だ。世界の店員がユニクロの服を着てジャンプをし、その瞬間を映像に撮ってコンテンツにした。
「どうしたら企業とユーザーを直接結び付けるコミュニケーションができるか」。広告宣伝ではなく、新しいメディアとしてのコミュニケーション手段を考え抜いた延長線上にUNIQLOCKがあった。
■ブロガーの反応がUNIQLOCKを変える
07年6月にUNIQLOCKをオープンした当時、2人には決して確実な自信があったわけではない。UNIQLOCKを開設した後、勝部氏と田中氏はブログパーツを貼ってくれたブログや感想を書き込んだブログを片っ端から読み込んだ。「面白いものを見つけた」「かわいい」。ブログには率直な感想が書き込まれていた。
女の子は無表情でよかったのか、世界に発信するのであれば外国人のダンサーも登場した方がいいのか――。2人が抱えていた様々な不安や疑問に、日々更新されるブロガーの書き込みが答えてくれた。
無表情さが不思議な感覚として伝わっていると分かれば、第2弾、第3弾にも踏襲。一方、余計だと分かったアラーム機能やプレゼント企画は第1弾だけで終えた。「守るべきところが何かを段々と見極めることができた」(勝部氏)という。
より広く世界のブロガーにアピールするため、報道機関向けリリース配信の共同通信PRワイヤーも活用した。欧米から南米まで、映像に関心があるブロガーやクリエイターが集まるサイトをピックアップし、集中的にUNIQLOCKを紹介してもらうよう働きかけた。「情報の根っこを押さえる」(勝部氏)作戦だ。
海外のブロガーがブログパーツを使い始めると、海外での受け止め方も飛び込んできた。「世界地図がちょっと違う」。日本を真ん中に据えた地図が海外の人から見れば新鮮に感じられることも気付いた。日本から発信することが大事なんだという自信につながった。
今でも田中氏は「UNIQLOCK」をキーワードにグーグルなどのアラートメールを設定しており、誰かがUNIQLOCKについてブログやSNSに書き込んだ内容は欠かさず読んでいる。リアルな反応を読み取ったことが「インターネットでゆるい囲い込みをする感覚」に自信をつけた。
■「企業のメディア化が進むと思う」
勝部氏は広告の未来について「企業のメディア化が進むと思う」と語る。これまでは広告代理店やメディアが企業とユーザーをつないできた。しかし、ウェブは直接つなげることを可能にする。各企業が自分のメディアを持ち、情報を発信する世界だ。
ただし、「メディアを自分で作るにはリスクが伴う」(田中氏)。広告代理店やメディアはユーザーを数多くつなげることを強みとしてきた。ただウェブサイトを作っても誰も見に来てはくれない。「ユニクロはリスクをとってくれた」(田中氏)。
ちなみにユニクロがテレビ広告などにかける国内事業の広告宣伝費は07年8月期は210億円。テレビの枠の買い取り費用がかかるテレビと比べてウェブは低予算だが、制作費はかかる。UNIQLOCKでは通常のテレビCMなどの制作費と同程度はかかったという。
勝部氏は「もっとマスに出ていきたい。知る人ぞ知るではなく誰でも知っている世界をつかみたい」と熱をこめる。そのための「革新的なアイデア」を今秋にも投入する計画だ。ユニクロの新メディア戦略の挑戦は続く。
